INTERVIEW
2017.07.21

㈱山櫻 市瀬社長に訊く ラガーマン社長が認める、社会人としての第一印象...挨拶も服装も日本人としての「きちんと感」

採用面接や提案営業の初回訪問時など、誰かと会うときに短い時間でも強い印象を残すには――。

組織のトップには日々多くの人が訪れる。経営者の視点から見た「記憶に残る人」、「もう一度話を聞きたくなるビジネスパーソン」の特長とは何だろうか?経営者自身が実際に心がけているポイントも聞ける経営者インタビュー『PERSON ~印象に残るあの人~』。

記念すべき第1回は、弊社 株式会社山櫻 市瀬豊和社長に話を聞いた。

「挨拶がさわやかにできる人は、それだけで好印象です」

―服装など外見的な部分が、個人の印象にどれくらい影響を与えると思いますか?

目立つ色のネクタイや高価な服を着ることが、必ずしも印象に残ることに繋がるとは思いません。スーツがきちんと着こなされていることと、ネクタイが緩まずきちんと結ばれていること。よれよれのスーツやぶかぶかのスーツはNGです。ちゃんと自分を「つくれているか」ということが大事ですね。

そして私が大切だと思うのは、まずは挨拶や笑顔。挨拶がさわやかにできる人は、それだけで好印象です。目から取り入れる情報はその人の印象に大きく影響するので、視覚的な部分は大切だと思います。

次に、その人の表情や会話の内容が大切です。若い人でも目に力があって表情がしっかりしている人は精悍(せいかん)な印象を受けますね。もちろん、第一印象だけでは判断せず、その後の会話の内容でいくらでも受け取り方は変わります。

―それでは、社長自身が心掛ける自分の第一印象のポイントはどこでしょうか?

特に自分の個性を出すことは意識していませんが、相手から見て「きちんと」見えるように気をつけています。誰かと会う前には鏡の前に立ち、相手に対して失礼がないかを確認します。例えば、髪が乱れていないか、ネクタイが曲がっていないかなど、高価なものを身に付けるというよりも清潔感を重要視します。

スーツなど着る物のサイズが大きすぎると締まりがない印象がありますから、身体にフィットしているかどうかは気にしますね。

「なぜピンク色が好きなんですか?
 と声をかけられたら有難いと思いますね(笑)」

―社長のこだわりポイントを教えてください。

会社のコーポレートカラーが「さくら色」なので、ピンク色の小物類を身に付けることがあります。時計やペンケース、老眼鏡、スマホケースなど、ピンク色のものを使用しています。

「なぜピンク色が好きなのですか?」と声をかけられたら有難いと思いますね(笑)そこから会社の話になって、PRをすることができますから。

「相手に対して興味を持って
 話を聞くということを心掛けてほしいですね」

―これまでに、社長にとって印象に残った人はどんな人でしょうか?

記憶に残る営業の方といえば、こちらが宿題にしたつもりもない小さな質問に対しても後日しっかり返答してくれた人は有能だと感じます。ちゃんと私の話を聞いてくれていたということはとても大事なことで、次にもう一度会って話を聞きたいなと思いますね。

初対面でも私がやっていたラグビーについての話をしてくる人は、訪問の前にちゃんと調べてきているなと思いますし、私自身も話しやすい内容なので話も弾みます。そういう点では自社の社員に対しても、一方的に話題を振るのではなく、まずは相手に対して興味を持ち、そして相手の話もよく聞くということを心掛けて欲しいですね。そうすることでお互いが勉強になり、相手に影響を与えられるようになります。コミュニケーションとは、どちらかが一方的におもしろい話をして終わるというのでは成り立たないと考えます。

しかし、ある分野において誰もが認めるほど優れ、相手に印象を強く残すほど中身のある内容を語れるようになるには多くの時間と経験が必要です。まだ経験が少なく、自信を十分に持てない若い世代の人は、少なくとも見た目や仕草はちゃんとしなければいけない、と思うのです。見た目や挨拶をちゃんとすることは、意識さえすれば誰もができる簡単なことですよね。

―中身のあるビジネスマンになるには、どういった意識が必要ですか?

例えばよく会議で見られる光景ですが、参加メンバー同士で話しているうちに時間だけが経ち、なかなか答えが出ない、といった状況が起こります。結果「社長どうしましょう?」ということになる。しかし、自分で答えを出し、それが正しいと周囲から認められなければ、自信というものは付きません。小さなことでも良いので、そういった経験を積み重ねることです。

また、私は社員に対してよく「自分たちはプロ集団だという認識を持つべきだ」と言います。私たちはお客様に商品やサービスなどの価値を提供し、その対価をいただいている。そして、その延長線上で自分の人生を自分自身で築き上げていくのです。どんな分野であれプロである以上は、自分の仕事に責任があるわけですから、組織の一員としても責任ある行動をとらないといけませんし、自分自身を磨き続けることも当然です。

「自分が仕事を通じて成長していくことが
 人生を豊かにしてくれる、ということを
 皆がそれぞれ感じ取って欲しいのです」

―「プロ意識」について詳しく教えてください。山櫻の社員に求めるものは何ですか?

分かりやすくスポーツ選手で例えると、プロのスポーツ選手は自身のパフォーマンスを上げて活躍できなければ収入も増えず、選手としては生き残れなくなる。そして年齢と体力の限界とも戦わなければならない。だからシーズンオフでも自主的にトレーニングしますよね。つまり、プロである以上は、自分をどう磨いていくかを意識すること。それは、会社の社員教育とは別次元で、個人が自分自身で考えなければならないことです。プロということは個人も成長しなければならないし、同時にチームも勝っていかなければならない。個人の成長、社員の成長なくして企業の成長もありませんから、その中の一員として各個人がどう成長するかを考え、実行していくかということです。そういう意識を社員に求めています。だからこそプロ意識を持って欲しいと伝えるのです。

私は体育会出身ですが、勝負に勝つには体力や精神力はもとより、知的さと綿密さが必要だということを身をもって経験してきました。ですから社員には、心身の健全性を保つことと共に、本を読んだり、調査をしたりと自身の視野を広げ知識を身につけて行くことを習慣付けて欲しいと思います。

先ほども言いましたが、私たちは自分の人生を自分で築いています。つまり自分の人生構築は全て自責なのです。自分のグッドライフ、幸せをどこに見出すのか。自分が仕事を通じて成長していくことが人生を豊かにしてくれる、ということを皆がそれぞれ感じ取って欲しいのです。

人間だから誰でも不満は出ます。でも一方でどうやって未来を豊かにしていくのか。仕事に携わっている時間は一日起きている時間の半分以上。その中で自分磨きをしないのはもったいないと思います。仕事を通して学ぶことは沢山ある。日々の中で様々な課題があり、それらを解決する中で勉強する。答えを出し、自信に繋がる。「わかりません」「できません」「時間がありません」という言葉は、自らの可能性を自ら否定しています。自分の可能性すべてをストップしてしまいます。これらの言葉が、仕事の中では出てほしくないですね。わからなかったら調べればいい。できなければ、どうしたらできるか考え、そのための努力をすれば良いのです。

―「出逢ふをカタチに」というドメインは、社長がどのような想いから考えついたのでしょう?

ドメインを変えたのは2011年の創業80周年を迎えた時です。それまでは紙製品の総合メーカーというのが自分たちの生業で、社員もその認識でいました。しかし、それだけでは未来を築けないという考えが、私自身危機感としてありました。紙製品だけでは事業を拡大し続けるのは難しい。ITの進歩による紙離れ、人口減少、需要減退…。世の中のニーズが大きく変化していますからね。実際、紙製品以外の製品の販売は既に行なっていました。

名刺印刷用プリンターを売り始めたのは平成7年、Web事業を始めたのは平成13年と、80周年よりも以前から意識的に少し幅を拡げてはいました。しかし、経営者の頭の中だけではだめで、社員全員がそう思って事業を拡大して市場を開拓していかなければなりません。ドメインを打ち立ててから6年経ちましたが、これからもその認識を深めていかなければならないという使命感があります。

山櫻は創業以来、人と人、人と企業、企業と企業の“出逢い”を、名刺や封筒といった紙製品を通してサポートしてきました。そこから視野を拡げ、紙製品に限らない様々な製品やサービスとして拡張していきたいという経営者としての想いがあります。封筒の売上は全体の60%強を占めていますが、それだけでは大きな成長はしていけないと考えています。封筒だけでは、とても限られた市場の中での競争になる。お客様としても、社員としても夢がもてる領域を創っていきたい…それは、今までやってきたことの無いことを考えることになるので、当然チャレンジの連続です。

でも、小さくても良いからチャレンジを1つでもすれば、次は「やったことがあること」、つまり経験になっていきますよね。経験しなければずっと同じ。現状維持の企業・人は市場競争から置いていかれます。努力している企業、頑張っている人は、周りにいくらでもいますから。これは考え方としては難しいことではないですが、自覚して自分自身に火が点かないと変われません。

チャレンジする習慣がある人と、ない人。習慣を変えるのはすごく難しいです。習慣を変えるには、明確な目標を持ち、自分の強い意志でその目標を目指して行く必要があります。会社では、主軸の業績目標を与えますが、各個人がプロ集団としてそのゴールに向かっていかないと成り立ちません。良い習慣を身につけるには、それを与えられた目標と考えるのか、自らがそれを目指し、その過程で自分自身を磨いていこうと思えるのかが、大きな分かれ目だと思います。

「印象や名刺も、受け手側のことをということを
 考えることが大切だと思います」

―名刺会社の社長がこれから、名刺という商品に対してチャレンジしていきたいことはなんですか?

ビジネスにおけるファッションは、自分の好みで個性を出すというよりは、受け手にどういう印象を与えるかという方を優先するべきだと思います。 名刺でも大事なのは、『交換した相手側にどう伝わるか』ということ。

名刺交換は自己紹介のためですが、そのあとは相手がそれをどう受け取り、どのように使うかまで考える必要があります。 文字の大きさを大きくして読みやすくしたり、しっかりした厚みのある紙を使ったり。

名刺も挨拶の時の印象も、受け手側のことを考えることが大切だと思います。名刺は紙製品ですが、ITと融合させることで、単なる印刷物ではないサービスとしての名刺を提供していきたいと考えています。


  • 市瀬豊和
  • 市瀬 豊和
    Toyokazu Ichise

    株式会社 山櫻 代表取締役社長
    大学卒業後は第一勧業銀行(現・みずほ銀行)に就職。2004年より現職。
    慶應幼稚舎から大学、そして銀行勤務時代までラグビー部に所属、高校日本代表、日本選抜にも選出される。日本ラグビー史に残る1985年大学選手権決勝の同志社戦でも活躍した。

    パーソナルカラー:スプリング(春)

  • 株式会社山櫻
  • 株式会社山櫻

    所在地/東京都中央区

    概 要/日本の紙製品メーカー。名刺を始め封筒、はがきなどの紙製品を製造・販売。2011年に創業80周年を迎えた。 人と人、人と企業、そして企業と企業の『出会いをカタチにする』プロフェッショナルチームとして 新しい製品づくり・新しいサービスの提供、そして第二の企業創造にチャレンジし続けている。

取材後記

市瀬社長と話をして印象に残ったのは「きちんと」という言葉でした。「きちんと」という言葉は日本人の根底に流れている文化です。それはラグビー選手として鍛え上げられた精神に基づくものかもしれません。山櫻は現代の日本においても忘れてはならない原点を大切に新しいことにもチャレンジしている企業だということを社員としてあらためて認識しました。

文/四宮真梨恵
写真/小野優衣
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