2019.05.24

人気アパレルブランドCLOUDY 灰OYA 銅冶社長に訊く アフリカで利益を生む持続可能なビジネスを確立 その根底にある想いとは

TAGS インタビュー SDGs

「CLOUDY(クラウディ)」は、アフリカの民族柄、伝統の織、特産品などを使用、今までにない "アフリカンテイスト" を取り入れたカジュアル&フォーマルのアパレルブランド。売り上げの一部をアフリカの貧困問題に取り組むNPO法人「Doooooooo(ドゥ)」の活動に充てると同時に、世界で認められる品質の商品を作り出すことで、アフリカの現地に確固とした雇用を生みだす仕組みを提示している。

同社の代表である銅冶勇人氏は、慶應義塾大学卒業後、世界最大級の金融グループ、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。のちにアパレルブランドCLOUDYを立ち上げるために退社する。「キャリアを手放すなんて」と周囲からの声もあるなか、起業を決意させた背景には何があったのだろうか?今回は、銅冶氏にブランド設立までの経緯と、アフリカにおけるビジネスについてお話を伺った。

転機は大学の卒業旅行

スラム街の実態を見て強く感じた想い

「最も衝撃的だったのは、キベラ地区という、
アフリカで2番目に大きいスラム街で見たものでした」

― アフリカに興味を持ったのはなぜですか?

銅冶勇人氏(以下銅冶):もともと、NBA(北米の男子プロバスケットボールリーグ)が好きで「バスケットボール選手かっこいい。黒人ってかっこいい」という憧れがありました。あるとき、区立図書館で読んだ『世界の民族』という本で、アフリカの民族衣装や文化を知り、ますますアフリカへの興味が沸きました。

「世界ウルルン滞在記」が大好きだったので、自分も大学の卒業旅行は一人旅をしてみようと思いました。そんな時、マサイ族の男性と結婚し、第二夫人になった日本人を知り、直談判してホームステイさせてもらうことになりました。そこでは本当に貴重な体験をさせてもらいましたが、最も衝撃的だったのは、もともと行く予定ではなかった「キベラ地区※1」という、アフリカで2番目に大きいスラム街で見たものでした。

そこは劣悪な環境で、五感で見たもの、感じたものすべてに衝撃を受けました。例えば、上下水道システムがないため、トイレ事情は最悪で、200万人もの人々が暮らしているにも関わらず、トイレは200世帯に1個しかありません。人々は便や尿を小さな袋にして、その後、屋外へ投げ捨てる...いわばフライング・トイレット(flying toilet)なんです。学校もなく、仕事もない、そんな放置されてきたアフリカの現状をなんとかできないかと強く感じました。

※1 キベラ地区

アフリカ南部のスラム街。地区の広さは東京ドーム約50個分。病院や公立小学校などはなく、ゴミはいたるところに捨てられ、トイレも限られているため公衆衛生面に問題が多い。

怒涛の社会人1年目

打ちのめされたときに勇気をもらったもの

衝撃のアフリカ旅行から間もなく、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社する。

「アフリカで出会った光景が自分を奮い立たせ、
勇気を与えてくれました」

― 新入社員時代のことを教えてください。

銅冶:大学卒業後は、就職が決まっていたゴールドマン・サックス証券に入社しました。新入社員時代は、とにかくがむしゃらに働きましたね。朝5時に出社して、翌朝2時まで働く、そんな忙しい毎日でした。体力的にも精神的にもつらいときがありましたが、アフリカで出会った人たちのことを思い出すと「自分の今の状況は、食べるものも、安全な寝る所もある。どうってことない」と思えましたね。アフリカで出会った光景が自分を奮い立たせ、勇気を与えてくれました。社会人になってからもアフリカへの想いは強くなり、ふたたびケニアへ行ったときには、組織を作って公式に支援したいと思うようになりました。

今の活動を始める大きなきっかけになったのが、東日本大震災でした。現地に行かなければ状況はわからないと思い、先輩のトラックを借りて毎週現地に向かいました。そこで、援助という形にとらわれず、直接アクションするという行為そのものに重点をおくように意識が変わってきたんです。

部下の一言で転身を決意

アパレルブランド「CLOUDY」の立ち上げ

途上国で利益を生むビジネスを確立するには何が必要か?キーワードは「継続性」と「民族性」だった。

「アフリカの民族柄、伝統の織は、日本のアパレル業界で
挑戦していける可能性があると感じました」

銅冶氏は2010年NPO法人「Doooooooo(ドゥ)※2」を創設。
ほとんど一人の活動で、自身の給与や周囲の寄付などで支援していた。

― 2010年にNPO法人「Doooooooo(ドゥ)」を創設後、2015年に株式会社DOYAとしてアパレルブランド「CLOUDY」を
創設するまでに、どのような経緯があったのでしょうか。

銅冶:あるとき、在籍中の証券会社の部下に「そっちの方が、楽しそうですね」と言われ、はっとしました。自分は、この部下にとって目指すべき人間でなくなってしまった…。必死になって自分を越えようとしている部下に対して、仕事以上に情熱をかけているものがあると見られていることは、部下にも会社にも失礼だと感じて、即辞表を提出しました。
こうして退職後、アパレルブランド「CLOUDY」を立ち上げたんです。

※2 NPO法人「Doooooooo(ドゥ)」

ケニアを中心に世界中で暮らす子供たちに対して、教育を受けることのできる環境を提供するための支援事業を行い、現地の子供から大人まで生活に困っている人々を中心に教育や仕事、様々な育成を行っている。NPO法人名の「Doooooooo」の8つの”o”は7大陸+もうひとつの新たな大陸、という意味がある。

→Dooooooooの活動について詳しくはこちら

― アパレル業界へ参入した理由は何だったのでしょうか?

銅冶:アフリカで学校を作ったとしても、仕事が無ければ意味がありません。現地で生産し、継続して雇用を生み出していくためには、何が仕事になるかをずっと考えていました。そこで目を付けたのは、その土地に根付いたアフリカのカルチャーです。アフリカの民族柄、伝統の織は、日本のアパレル業界で挑戦していける可能性があると感じました。

「CLOUDY」の挑戦

Be a Changer、Be a Challenger

アフリカの人々にとって何が幸せか...答えはまだ出ていない。
そしてこれからも探し続ける。

「現地の人たちの思いも大切にしながら、
一緒に"ものさし"を作っていきたい」

銅冶:CLOUDYはデザイン性に優れてるから購入した、その結果支援していたということが大事です。たとえ「ボランティア精神がある」「エシカルに興味がある」といった人でなくても手に取って購入してもらえる、そういうブランドを目指しています。実情として、そういった社会への貢献意識がある人と無い人と比べると、圧倒的に関心が無い人の方が多いです。また、まだ日本ではアフリカへの支援にハードルの高さを感じる人が多い。そういった人たちにもアプローチするねらいはあります。

一方で、アフリカへ物資や資金を与えることは一時的な手段であって、結局アフリカのためにはならないこともある。与えられることを当たり前だと思ってしまって、それ以上の努力をしなくなってしまうことに危機感を持たねばならないのです。途上国で作っているからといって、品質や価格で消費者に魅力を感じてもらえなければ継続して購買してもらうことはできません。製品そのものに魅力を感じてもらい、利益を生むことのできる仕組みを作ることが、事業を継続するうえでのポイントだと思います。

― アフリカとビジネスをするという点で苦労したことはありますか?

銅冶:学校に行った事が無いのは当たり前で、教育を受けていないからセンチメートルが分からない。Tシャツのポケットに使用する大きさに断裁してくれと頼んでも、100枚中15枚くらいしか使えるものが出来ません。食べるものを買うお金欲しさにミシンを売ってきてしまう人もいる…。現地との温度差にギャップを感じて、やっていることに疑問を持たずにはいられませんでした。

でも、それは自分の「ものさし」であって、アフリカの人たちにはもちろん、彼らなりの「ものさし」がある。教育と雇用を生み出すことが、本当にアフリカの人たちを幸せにすることなのかは分かりません。今も模索し続けています。現地の人たちの思いも大切にしながら、一緒に「ものさし」を作っていきたいです。

社長が思う「印象に残る人」とは

優しさの中に、現実から目を逸らさずに立ち向かう勇気が光る銅冶氏。
これまでの経験で、印象に残った人物の特徴を訊いてみた。

― 印象に残る人、また会いたくなる人の特徴はありますか?

銅冶:行動が早い人は印象に残ります。以前、私の活動に共感してくれた方が、初対面にかかわらず大手アパレル企業のトップの方にその場で電話し、紹介してくださったんです。そのスピード感に驚きましたし、そのことには非常に感謝しています。

それと商談中に限らず、ふとした瞬間にその人の人間性が垣間見れたとき、相手の内面を知れたような気がして嬉しくなる時があります。例えば、人とすれ違うときや、業者の方への対応、別れ際に挨拶をした後の表情など…。いつも見ているわけではありませんが、そういったシーンで素敵な行動を見かけると、またあの人に会いたいなという気持ちにさせられますね。

― お気に入りのベストカラーはありますか?

銅冶:CLOUDYはカラフルな服が多いですが、実は仕事では白か黒しか着ないんです。何が自分に似合うか、周囲にいつも聞くようにしています(笑) 好きな色は「ブルー」。濁っていないイメージが好きですね。

CLOUDY × 山櫻 ペーパーハンガー

日本における年間のプラスチックのゴミの量は940万トン。そのうちリサイクルにきちんとまわっているのは25%です。プラスチックゴミがもたらす環境破壊は、海洋汚染はじめ海洋生物への影響がとても大きくなります。アパレル業界においてもプラスチックハンガーというものはつきもので、大量のゴミとして廃棄されているのが現状です。CLOUDYでは、「Bye Plastics」のコンセプトのもと、今後すべてのハンガーをプラスチックから、株式会社山櫻と共同プロジェクトで開発した、ペーパーハンガーを使用することになりました。このペーパーハンガーは、リサイクルペーパーおよびFSC森林認証紙のみを材料に使用しており、アパレル業界初の取り組みとして注目されています。

5月8日(水)〜5月21日(火)新宿伊勢丹3階thestage3で開催されたCLOUDY Limited Shopにて、ペーパーハンガーがお披露目となりました。





profile-2

銅冶 勇人Yuto Doya

株式会社DOYA 代表取締役社長

東京生まれ

2008年 慶應義塾大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社

2010年 特定非営利活動法人Doooooooo創立

2014年 同証券会社を退職し、翌年株式会社DOYA創立

同年9月 アパレルブランドCLOUDY創設


Favorite color:ブルー


profile-2

株式会社 DOYA(アパレルブランド CLOUDY)

所在地/
東京都渋谷区
概 要/
アパレル製品、アクセサリー、服飾雑貨、日用雑貨の企画、製造、販売並びに 輸出入など
ホームページ/
https://cloudy-tokyo.com/

取材後記

取材中、銅冶社長は明るく、気さくな雰囲気で場を和ましてくださいました。アフリカの布・テキスタイルについてお話される姿はとても輝いていて、想像していたアフリカの過酷な現状を感じさせないほどでした。製造に携わった多くのアフリカの方々の笑顔がCLOUDYのアイテムには詰まっているように感じます。サステナブルとファッションが融合したCLOUDYに今後も注目です。


文/WATASHINO 四宮真梨恵  写真/WATASHINO 小野優衣


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